第113回【ゲスト#5】ストリートファイター6大会を熊本で開催|「福祉×eスポーツ」に挑む寝たきり芸人・あそどっぐさん

ゲー旅#113 ゲームしあわせ紀行

イントロダクション

今回は、寝たきり芸人にしてYouTuberのあそどっぐさんをゲストにお迎えしました。

僕があそどっぐさんの存在を知ったのは、東京eスポーツフェスタのステージイベントでした。障害を抱えている方がeスポーツに取り組むブースで、あそどっぐさんはリモートで参加されていて、その姿を見たのが最初です。そこからSNSやYouTubeをフォローするようになりました。

2026年10月31日、あそどっぐさんは熊本で、ご自身では初めてとなるオフラインの『ストリートファイター6』大会を主催されます。その背景には、福祉の現場を元気にしたいという思いがありました。今回は、大会を開くに至った理由から、ゲームとの出会い、11時間ぶっ通しで100人と戦った「100人組手」、これから挑戦したいことまで、たっぷり伺っています。

10月31日、熊本で「あそどっぐ杯」を開催します

会場は、熊本市中央区白山にある地域活動支援センター「いんくる」。あそどっぐさんが普段から通っている、福祉の現場です。

  • 日時:2026年10月31日(土) 対戦会11:00〜/大会15:00〜
  • 会場:地域活動支援センター「いんくる」
  • 参加:観覧は自由。大会への出場は事前エントリー制で、参加は無料
  • エントリー先:トナメル

こうして一般から出場者を募る形での開催は、今回が初めてだそうです。

きっかけは、会場となる施設の職員さんがスト6をプレイしていたことでした。福祉業界はいま人手不足などで元気がない。そんな課題感を共有するなかで、「オンラインではなく、みんなが集まる福祉の場所に、福祉と関係のない人にも来てもらって、一緒に楽しいイベントができたらいいね」という話になったといいます。

当日は、あそどっぐさんが普段使っているデバイスを実際に体験できるコーナーも用意されています。興味がある方は、ぜひ会場で触ってみてください。

ゲームに戻ってきた日

あそどっぐさんは子どものころ、スーパーファミコンで遊んでいたそうです。ところが手が動かなくなってから、ゲームを離れていました。そこから4年前、視線入力でゲームができると知ったことが、復帰のきっかけになります。

背中を押したのは、近所にできた株式会社ハッピーブレインの存在でした。手が不自由でもゲームを楽しめるようにサポートしてくれる会社が、歩いて行ける距離にできた。それなら、と始めてみたところ、子どものころの記憶が蘇ったといいます。

「これいいな、という感じで今も続けています」と、あそどっぐさんは穏やかに話してくれました。

視線入力と、わずかな筋肉の電気で戦う

あそどっぐさんの操作方法は、想像以上に繊細です。画面上に架空のボタンが配置されていて、そのボタンを見ることで技が出る。たとえば強パンのボタンを見れば、強パンが出る仕組みです。

ただし、ボタンを見ている間は、自分のキャラクターを見ることができません。周囲をぼんやりと見ながらボタンを見て操作するため、間違えることも多いのだそう。「慣れていくしかない」と笑います。

身体の使い方も独特です。左手でボタンを2つ、右足で1つ、左足で1つ。それ以外の部分は視線で操作し、口元にはマウスがあります。足は本当にわずかしか動かせないそうで、そのわずかな動きを押し込みに変えているといいます。

使われているのは、心電図のように微量な筋肉の電気を読み取る機械。それがスイッチになっているのです。「右足と左足がどっちだっけ」と混乱することもあるそうで、その話を聞いて、プレイの裏側にある集中力を想像させられました。

11時間、100人と戦い続けた「100人組手」

あそどっぐさんが行った「100人組手」のアーカイブは、11時間29分ありました。僕は最初の1時間ほどをリアルタイムで見て、あとからアーカイブを確認したのですが、その長さには驚かされました。

終盤には、カスタムルームに誰も来なくなってしまったそうです。そこで、あそどっぐさんは自分からバトルハブへ戦いに行き、100人をやり切りました。ただし結果は、「ぼこぼこにされましたよ、みんなに」。この一言に、お笑い芸人としての力も感じます。

普段デバイスを使ってゲームをしている方が、11時間ぶっ通しで戦い続ける。僕自身、あそどっぐさんより5歳ほど若いのですが、11時間連続でスト6を遊ぶのは正直しんどい。この話を聞いて、スポーツとしてのeスポーツという見方を、あらためてさせてもらいました。

チーム「ジャイアント寝たキリング」

あそどっぐさんは、障害のあるプレイヤーによる『ストリートファイター6』のチーム「ジャイアント寝たキリング」の部長を務めています。

  • 部員は11名。半分以上が寝たきりで、その他の方も何かしらの障害がある
  • 住んでいる場所は北は北海道から南は鹿児島まで、年齢も幅広い
  • 下は小学生。あそどっぐさんが最年長

最近は、その若い部員の成長がすごいのだそうです。「ヒット確認ができるんですよ。僕ができないのに」。年の差を超えて、純粋に悔しがる姿が印象的でした。

VTuberの方との対戦も行われていて、5対5の企画に参加したこともあるとのこと。そのきっかけを作ったのが、かみ〜ゆさんでした。実際の対戦の様子はYouTubeにアーカイブが残っているそうなので、気になる方は探してみてください。

チームでは、対戦相手も随時募集中だそうです。

『ストリートファイター6』の魅力

あそどっぐさんがスト6を面白いと感じるのは、どんなところでしょうか。

「格ゲーを通して、いろんな人と知り合える。戦ったら仲間になれる、みたいな」

オンラインでもオフラインでも、小さな子どもから年上の方、障害のある方、男女関係なく、本当にいろいろな人が遊んでいる。その広がりを肌で感じているといいます。コンボを覚えていなくても操作できる「モダン」の存在も、その入り口を大きく広げています。

キャラクターは、最初に勧められた本田を使っているそうです。速い動きや速いボタン操作が苦手なため、しゃがんで溜めて待ちながら戦える本田は相性が良く、モダン適性も高いのだとか。最近はイングリッドやサガットにも挑戦していて、まだまだ練習中とのことでした。

オフラインでやるから、伝わるもの

大会は15時からですが、会場はその前から開いています。早めに来れば、参加者同士で教え合ったり、スタッフの強い人に「どうすれば強くなれるか」を聞いたりできる時間があるそうです。

当日の設営は、普段あそどっぐさんが自宅で使っているマットレスを持ち込み、その上でプレイする形になります。前日には、アルマスの方のエルグランドで運搬してもらうのだとか。自宅の環境を、そのまま会場に持っていくわけです。

あそどっぐさん自身、オフラインの経験は過去に一度だけ。このイベントは、ご本人にとっても挑戦になります。

「今回、来てもらって、僕がスト6で健常者のスタッフにボコボコにされるところとか見てみてもらうと、これでいいんだ、みたいな感じてもらえるかなって」

障害があってもなくても、分け隔てなく遊べる。その景色を、会場で直接見てもらいたいというメッセージが込められていました。

大会の運営面では、熊本eスポーツ協会と株式会社ハッピーブレインが後援に入り、協会を通じてカプコンの許諾も取得済み。大会運営の規約にも準拠しているので、安心して参加できるとのことです。当日の様子は、生配信ができればチャレンジしたい、難しければ録画で報告したいというお話もありました。

YouTube登録者10万人までの道のり

あそどっぐさんのYouTubeチャンネルは2012年に開設されました。当時はまだゲームを再開しておらず、コントを中心に投稿していたそうです。

最初は、まったく伸びなかったといいます。転機になったのは、いくつか偶然バズった動画。そのひとつが、瓦割りのコントでした。瓦に手を落とすところは大丈夫だったのに、バットに落とす部分はNHKではNGになったそうで、「基準がわからない」と笑っていました。今では登録者数10万人を超えています。

ネタは作家さんに頼らず、すべてご自身で考えています。若いころはネタ帳を書いていたそうですが、今は設定をぼんやり考えて、そのままステージに出るスタイル。熊本のステージを中心に、県外からの依頼があればどこへでも出かけるそうです。

写真集『あそどっぐの寝た集』

あそどっぐさんは2017年、写真集『あそどっぐの寝た集』を刊行しています。写真は、パラリンピックを撮影されている越智貴雄さん。越智貴雄さんと言えば、写真集『切断ヴィーナス』の作者でもあります。

表紙は、砂浜にあそどっぐさんが横たわっている一枚。始祖鳥をイメージしたもので、小ネタと写真を組み合わせた作品になっています。大事なところは隠れているので安心してください、と本人が笑っていました。Kindle版もあるそうです。

「やりたいことは、まず誰かに言う」

毎日を楽しく生きるためのコツはありますか、と伺ってみました。

「そんなのは、何もないですね。実は僕も、日頃からクヨクヨ言っている人間なんです」

そのうえで、ひとつだけあると言って、こう続けました。やりたいことを誰かに言うときは、勇気がいるし、ちょっと照れ臭い。それでも「自分はこれがやりたいんです」と言う努力はしている、と。

僕自身、インタビューのお願いはほとんどラブレターを送るのと同じ感覚です。書面に起こして「これ、どうですか」と伝える。断られたらどうしようとドキドキしながら送っています。だから、この言葉にはとても共感しましたし、今回こうして快諾いただけたことが、あらためてありがたかったです。

これから挑戦したいこと

あそどっぐさんが今いちばんやりたいのは、やはり10月31日のイベントです。その先については、こんな話を聞かせてくれました。

お笑い芸人としては、ニューヨークかロンドンでスタンダップコメディを学び、寝たままステージに立つこと。eスポーツとしては、チームの活動を続けて部員を増やし、チーム主催のイベントをどんどん開いていくこと。興味があることを「面白そう」と思ったら、とりあえず受けてみる。その姿勢が、いまの活動の幅をつくっているのだと思います。

ゲームの話では、パソコン版の発売が待ち遠しい『グランド・セフト・オート』の新作に触れ、「過去作はやったことがないので、初見で遊んでみたい」と話していました。近々やりたいのは『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』。子ども時代の思い出は『ドラクエ5』で、ビアンカとフローラではビアンカを選んだそうです。久しぶりにゲームの世界に戻ってきたからこそ、遊びたいものが尽きないのでしょう。

AIの感想

あそどっぐさんの話を聞いて、いちばん強く残ったのは「戦ったら仲間になれる」という言葉でした。障害があるなしに関係なく、ゲームの世界では実力だけがものを言う。だからこそ、健常者のスタッフにボコボコにされるところを見せたいと言える。その明るさは、福祉や介護という言葉がまとう重さを、軽やかにほどいていきます。11時間の100人組手、小学生にヒット確認で負ける話、どれも笑いながら語られるのが本当に魅力的でした。今回のインタビューは、僕自身が「障害のある方と話す機会がなかった」という前提を、静かにひっくり返してくれる時間でした。10月31日、熊本の「いんくる」でゲームの楽しさを体感してみませんか。きっと、あなたの世界も少し広がります。

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